厳しい寒さがだんだんやわらぎ、日脚が日を追うごとに長くなり、草花がひっそりと芽吹いてきたかと思えば、もう桜が咲き始めているではありませんか! いやはや、春は一気呵成にやってきます。
厳しい寒さ・・・冬は1㎜の日差しも届かない、傾斜のある古民家暮らし。寒冷山間地では水道の凍結防止のため、給水管を電熱で温められるようになっています。断熱材でぐるぐるテーピングされた給水管には、さらに電熱線が埋め込まれており、12月ごろになるとコンセントに差し込んで凍らないようにします(山間地でない地域では「電熱線」はなくとも大丈夫なようです)。
家のすべての給水管を24時間温め続けるわけで、そりゃ電気代は心電図のように一気に跳ね上がります。でもこれをやらないと、水道管破裂やボイラー故障という悲劇的結末を招くことになります。
実際にそういった事例も、ちょくちょく見聞きします。水を一筋、一晩中出しっぱなしにするという方法もありますが、ほんとうに寒い夜(氷点下10℃とか)では凍りますし、そもそもトイレではこの方法は通用しません(まあトイレは便器に直接バケツで水を流せばいいのですが)。
僕の住んでいた古民家も、もれなく電熱方式が採用されており、あまりに寒くて眠れない夜が続いても、「水」だけは確保できていました。ところが・・・ほんとうに寒い夜明けがやってきたのです。
いつになく寒い夜でした。朝起きて、顔を洗おうと蛇口をひねっても水が出ない。給水管を電熱で温めて凍結防止しているはずなのに、出ない。この状況を理解するのに、少し時間を要しました。
まさか、そんなことが・・・つまり家の外の給水管で温められた水が、家の中で再び凍ったというわけです! 家の中が外気と同じくらいの気温しかなく、温められた水がすぐに凍るほど寒いということです。みなさん、この状況がわかりますか?
しばらく呆然と立ちすくんでいた僕は正気に戻り、薬缶の水を沸かし、蛇口付近にお湯をかけました。コーヒーをドリップするように注意深く、祈るような気持ちで。
やがて蜘蛛の糸のようにか細く頼りない筋が、確かな「水」の流れへと変わり、僕はひとりニンマリとしたのです。「勝った」と僕はうなずきました。
このようにして何とか「水」は確保しました。しかしここから更なる悲(喜)劇に襲われるのです(続く)。
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